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磁壁運動で創発電場を観測
要約
理研らの国際共同研究チームは、磁性ワイル半金属NdAlSiのマイクロデバイスで電流駆動した磁壁の振動に伴う創発電場を複素インピーダンス計測で検出しました。磁壁の散逸的な「摩擦」がその発現に重要な役割を果たすことが示されています(Nature Physicsオンライン版掲載、1月15日)。
本文
国際共同研究グループは、磁性ワイル半金属NdAlSiを用いて、電流で駆動した磁壁の動きに伴う創発電場を観測しました。磁壁は磁気ドメインの境界に現れるスピン構造であり、その動的変化が電子に仮想的な電場として影響を与えることがあるため注目されています。本研究では磁気力顕微鏡で実空間の磁気ドメインと磁壁を確認し、集束イオンビームで作製したマイクロデバイスに交流電流を加えて複素インピーダンスを測定しました。測定結果と数値計算の比較から、磁壁運動に伴う散逸(摩擦)が創発電場の発現に重要であることが示されました。掲載はNature Physicsのオンライン版(2026年1月15日)です。
観測・実験の要点:
・試料は磁性ワイル半金属NdAlSiで、原子配置に由来するフェリ磁性が中性子散乱で確認されていることが報告されています。
・磁気力顕微鏡により磁気ドメインは約0.5〜数μmのスケールで存在し、その境界にストライプ状の磁壁が確認されました。
・集束イオンビームで切り出したマイクロメートルスケールのデバイスに交流電流を印加して磁壁を駆動し、輸送測定を実施しました。
・複素インピーダンスの虚部(位相応答)として創発電場に相当する信号が検出され、磁場が約0.2T以下で磁壁が存在する領域で増大しました。
・複素インピーダンス虚部の符号や数値計算との比較から、散逸的な磁壁運動(摩擦)が創発電場の発現に寄与すると結論づけられています。
まとめ:
本研究は、磁壁の散逸的な運動が創発電場を生むことを実証した点で基礎物理の理解に寄与します。研究成果はスピントロニクス素子の電流駆動や極小インダクタの基盤となる応用研究につながる可能性が示唆されています。掲載は2026年1月15日で、具体的な実用化時期や今後のスケジュールは現時点では未定です。
