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燃料電池向けフッ素フリー電解質膜を開発
要約
山梨大学、早稲田大、信州大の共同研究チームが、フッ素原子を含まないプロトン導電性電解質膜を開発しました。膜は80〜120℃で高い導電性と優れたガスバリア性を示し、過酷な劣化試験で10万サイクル以上の耐久性と、別条件の試験で1万サイクル超を確認しています。今後は大型セルや積層スタックでの検証を進める予定です。
本文
共同研究チームは、フッ素原子を含まない三元共重合体を用いたプロトン導電性電解質膜を開発しました。従来のフッ素系膜は耐久性やガスバリア性に優れる一方で、合成法の制約やPFASに関連する長期影響の懸念が指摘されてきました。今回の膜はポリエチレン基材に均一に含浸させた複合膜として作製され、80〜120℃で高いプロトン導電性と機械的な伸びを示しました。成果は学術誌に掲載され、今後は大型セルやスタックでの実証を目指すとしています。
主な確認点:
・新規複合膜「SP-PAC12-QP-PE7」は膜厚7μm、ポリエチレン基材の空隙率44%で作製されています。
・80〜120℃の範囲でフッ素系電解質膜と同等のプロトン導電特性が確認されています。
・80℃、60%RH条件での破断伸びは300%を超え、薄膜でありながら伸縮性が高いです。
・水素透過率は市販のフッ素系複合膜の約1/4で、ガスバリア性が高いと報告されています。
・加速劣化試験では一部で10万サイクル以上の耐久性を達成したと発表され、別条件の乾燥・湿潤試験でも1万サイクルを超える結果(フッ素系の約1.3倍)を得ています。
・合成には0価ニッケル錯体を用いたが、量産化や低コスト化のために錯体を用いない重合法の検討を進めています。
まとめ:
今回の成果は、フッ素原子を含まない電解質膜で高温運転下の導電性やガスバリア性、機械的性質、耐久性を同時に示した点が特徴です。検証は小型セル(電極面積4.41cm2)で行われており、研究チームはより大型のセルや複数セルの積層スタックでの性能確認を関連企業と進める予定としています。現時点では商用化の時期は未定で、量産化に向けた合成法や製膜プロセスの最適化が課題とされています。
